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耕さない田んぼの稲つくり(冬期湛水・不耕起移植栽培)を南阿蘇で実践しています。

 

〒869-1411 熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陰4486-19

耕さない、不耕起NO TILLFARMING

農業 agriculture
ラテン語で「土地を耕すこと」の意 (agri:土地/耕地+cultūra:耕作)

◇何故、耕さない稲つくりなのか

 農耕民族や耕作地などにも「耕す」が使われているように、作物つくりは耕すことが常識である。
 それにも関わらず、耕さなずに稲つくりを行うのは、何故なのか・・・。
 結論すると、耕さない田んぼの稲つくりのでは、「耕さない」と「年中、湛水化する」ことで、
  (1)稲が元気で病気にならないので殺菌剤がいらない、
  (2)稲に害を与える虫やその虫を餌にする虫や他の生きものの生息する豊かな生態系が虫害を最小限にするため、殺虫剤がいらない、
  (3)反あたり一千万匹以上も生息するイトミミズの排泄物がトロトロ層となり、雑草種子を覆い、日光を遮り、雑草の発芽を抑制するので、除草剤がいらない、
となるので、いわゆる農薬を使うことなく稲つくりが可能なことが、最初の理由である。

 そして、その次の理由が、トロトロ層に含まれる養分を糧に稲は生長するので、化学肥料どころか有機肥料さえも使うことなく稲つくりが可能になるためである。

 つまり、「耕さずに、年中、水を張る稲つくりは、環境にも、生きものにも、体にも優しい」からであると、言い替えることができる。

 耕さない田んぼの稲つくりは、「田んぼを生きものでいっぱいにする稲つくり」と言っても過言ではなく、自然の恵を貰うだけでなく、生きものを豊にすることで自然にお返しすることができる(=自然環境を豊かにする)、自然と共生する稲つくりと言うこともできる。

耕すことなく、昨年の切り株と切り株の間に苗が植えられる(撮影:2012年05月05日)

◇耕さないことによる土壌の物理的な変化

 耕さない田んぼの稲つくりでは、去年の切り株と切り株の間に苗を植える。
 去年の切り株は、夏頃までに分解され、確認できなくなってしまうのと同様に、稲の根も土壌中で分解されてなくなってしまうことになるが、根の場合は、根穴と呼ばれる空洞化した穴が土壌中に残されることになる。
 この根穴は、田んぼの土壌性質を変えてしまう特性を発揮することになる。

 稲の根は、①真っ直ぐ下に伸びて硬盤層を突き抜ける根、②斜め下や横方向に伸びる根、③伸びている途中で生長を止められた根と、複雑な根圏が形成されている。
 耕さない田んぼの稲の根穴は形状がそのまま維持されるため、①の根穴は水の浸透路となり、②の根穴は適度な水分を保ち、③の根穴は水分を貯えることになり、その田んぼは「水はけが良く、水持ちの良い田んぼ」へと変貌することになる。

 畑では土壌の団粒化が進むと、「水はけが良く」かつ「水持ちの良い」という相反する特性を持つと言われているが、田んぼでは根穴構造がその役割を持つことになる。
 田んぼで「水はけが良いと」は貯められた水が適度に入れ替わることを意味し、田んぼで「水持ちが良い」とは土壌が栄養成分を保持する力(保肥力)があること、少々の干ばつには耐えることを意味している。

 耕さない年数を重ねるた分だけ根穴構造が複雑化するが、それに伴い、稲の生長が良くなるばかりでなく、収穫されるお米も美味しさが増す。
 それらの具体的な理由については根穴構造による「水持ちが良く、水はけが良い」という特性以外に、根穴を快適な環境として生息する土壌微生物との共生やそれらからの恩恵があるためと考えられる。