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耕さない田んぼの稲つくり(冬期湛水・不耕起移植栽培)を南阿蘇で実践しています。

 

〒869-1411 熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陰4486-19

FAQFAQ

お寄せいただいた質問や想定される質問を、都度掲載しています。

 FAQ:耕さない田んぼ関連

 FAQ:塾関連

 FAQ:田んぼの市民農園関連

 FAQ:その他

 

耕さない田んぼ関連

耕さない田んぼを見学したい。

耕さない田んぼと慣行栽培の田んぼを比較して、大きな違いを見いだすことはほとんどできないと思います。
田んぼの生きものが多いことや稲が元気なことには気がつくと思いますが、大きな違いは田んぼの土壌で活動する菌根菌やイトミミズなどの微生物が慣行栽培の田んぼより多かったりするのですが、イトミミズなどは生きもの調査をしないと、その実態がわからなかったりします。
菌根菌などの菌類は稲の根や葉で共生していると想像していますが、高性能な顕微鏡でないと確認できません。
このような背景から、田んぼを見学するだけのご依頼はお断りしていますので、ご理解下さい。
2013年は耕さない田んぼの見学を希望する方が数人になった段階で、南阿蘇の耕さない田んぼ見学ツアーを開催しますので、その機会をご利用ください。また、ツアーに参加したい旨、お問い合せに紹介されている何れかの方法にてお申し出ください。

「年中水を張っていると、湿田のように田んぼが深くなる」と周りの方に言われる。

確かに、水がなかなか干上がらない田んぼは耕せば耕すほどに、深くなってしまうようです。
しかし、耕さない田んぼは文字通り「耕さない」ため、前述の田んぼの様に深くなることはありません。

「耕さない」ことで土壌環境が変化するためですが、耕さない田んぼの稲つくりを何年も重ねると、残された稲の根が「根穴構造」を形成するようになり、水持ちがよく、水はけのよい田んぼへと変化します。

農文協から出版されている映像図書「イネの不耕起移植栽培(全2巻)」の推奨コピーは、「不耕起栽培は湿田を宝に変える画期的な新しい農法」と紹介されています。

また、秋田大学の佐藤照男教授も「不耕起は稲の根が作る”根穴構造”を生かせる農法」として、秋田県の八郎潟干拓地の田んぼ(湿田として知られる)での不耕起栽培の研究を続けています。

「イネの不耕起移植栽培(全2巻)」(農文協)については、購入するか国会図書館等で閲覧可能なようです。
佐藤照男教授の研究については、"根穴構造"と"秋田大学"等をキーワードにインターネットに公開されている情報を検索していただければ、多くの情報にたどりつけます。

「代かきしない田んぼは、3年目あたりで漏水田になる」と周りの方に言われる。

年月を重ねた耕さない田んぼは、水持ちがよく、水はけのよい田んぼに変貌していきます。
実際、千葉県香取市の二十数年間も耕してない田んぼでも、南阿蘇の耕さない田んぼ歴6年目(平成25年現在)の田んぼでも、漏水の心配をすることなく、稲つくりができています。

この揶揄も「年中水を張っていると、湿田のように田んぼが深くなる」と同様に、耕さない田んぼの経過年数に応じて形成される土壌の「根穴構造」の仕組みを理解できないことに起因していると思います。


塾関連

耕さない田んぼでの稲つくり塾への入塾のタイミングについて

耕さない田んぼでの稲つくり塾への入塾は、基本的に、何月からでも入塾可能です。
ただ、お勧めの時期としては「塾が開始される初回」以外に、講義内容が大きく切り替わる「田植えが行われる5月」、「冬期湛水の準備が行われる10月」になります。
途中入塾の場合、農業専門用語を始め、稲の生理や耕さない田んぼの稲つくりの理論等の他に、既に説明が終わっている内容をベースに講義内容が説明されるために戸惑いを感じる事があると思います。
その場合、要望があれば、特別に補講を設定するなどのお手伝いしますが、テキスト『不耕起でよみがえる』の内容を押さえていただければ、問題ないと考えています。

稲つくりの経験がなく、いきなり耕さない田んぼでの稲つくり塾への入塾は不安です。

耕さない田んぼでの稲つくり塾の内容は、稲の生理を中心にして耕さない田んぼの稲つくりを学びます。
慣行栽培での稲つくりの経験が豊かな方よりも、未経験の方のほうがこれらの理論を素直に受入れる傾向があります。耕すことが常識の慣行栽培の経験者には「耕さない」という、これまでの経験を否定される耕さない田んぼの稲つくりを受け入れるのは簡単なことではないようです。
初期の段階は、未経験者にとって初めて耳にする農業用語の意味を理解するのに戸惑うかもしれませんが、学びたい意欲が勝っているのであれば、乗り越えるのは難しくありません。

「耕さない田んぼでの稲つくり塾」の「スポット」受講形態の目的について。

耕さない田んぼでの稲つくり塾は、稲の成長に合わせ、各課程を積み上げる講義内容になっています。
スポットにて受講する場合、講義済みの課程については、復習として触れられる程度であることをご理解いただいた上で、お申し込みいただくことになります。
そのような背景にもかかわらず、「スポット」受講形態を設定している理由は以下のご要望にお応えするためです。
 @年間を通して、日程を確保するのが難しい、
 A年間受講で入塾する前に、塾の雰囲気を確認する機会が欲しい、
 B苗つくりの課程(第1〜第5課程)だけを受講したい、等。

「稲つくり」を一年もかけて学ぶ理由。

栽培機会要因として、稲つくりは、年に一度しか栽培できません。成人と同時に稲つくりを始めたとしても75才までに55回の栽培経験しかつめないことになります。
稲つくり農家は稲つくりで生計を立て、また、将来目標といしている方も将来は生計を立てることになるため、失敗のリスクを最小限にする必要性から耕さない田んぼでの稲つくりをきちんと学んでいただくことになります。

気象環境要因として、天候が同じ年はなく、毎年、異なる環境での稲つくりになるため、毎年がその環境での稲つくりの一年生になってしまいます。

地理環境要因として、自然の力を借りる稲つくりですので、田んぼ毎に異なる土壌環境や風土環境に合わせた稲つくりを行わざるをえません。大げさに言うと、田んぼの数だけ稲つくりの手法があることにあることになります。

孤独環境要因として、農耕が始まった頃から「耕す」が常識となっている農業に対抗するかのような「耕さない田んぼでの稲つくり」は非常識以外の何者でもないため、隣近所からは白い目で見られ、誰かに相談するにも教えを請うにも、先輩や同僚は未経験の農法ですので、まともなアドバイスは得られません。
耕さない田んぼの稲つくりを始める地域では、ドンキホーテとなって巨大な常識に立ち向かう役を演じることになります。

そのような背景から、耕さない田んぼの稲つくりの特異性を学ぶことで、個々が自信を持って耕さない田んぼの稲つくりができるようにする必要があります。
また、耕さない田んぼの稲つくりは、言い換えると「稲本来の力を引き出す稲つくり」と言っても過言ではないため、稲の生理をしっかり学ぶ必要があります。

耕さない田んぼの稲つくりの理論のみで、知識を身につけてもらう方法もありますが、「耕さない」という非常識の環境では非常識な現象が少なくなく、幾ら語っても、常識を超える想像は難しいのが現状です。百聞は一見にしかずで、非常識な耕さない田んぼの変化や非常識な稲の生長を年間を通して観察し、目の前で広がる非常識を認識した上で、耕さない田んぼの稲つくりの理論を学べるように構成しています。(2012年12月24日記)


田んぼの市民農園関連

興味があります。参加するには、どのような農作業道具を揃えなければいけませんか。

特別な農作業用の農機具を準備する必要はありません。
田んぼに入っての作業がある場合などに備えて、水田用のゴム長靴さえ用意すれば、日差しよけの麦わら帽子、軍手、タオル、着替えなどは、畑での農作業で用意するものになります。
耕さない田んぼの場合、いろいろな生きものと出会う機会が多いので、観察用に採種するための虫取り網などを用意することになると思いますが、それは、あなたの考え方しだいです。


その他

九州界隈で耕さない田んぼの稲つくり(不耕起栽培)の実践者はどれほどいますか。

面識のある方で、耕さない田んぼでの稲つくりに挑戦され、穫れたお米を販売している方に限定すると、
  ◇ 熊本県菊池市の上野さん(不耕起栽培歴:10年)
  ◇ 大分県宇佐市の松本さん(不耕起栽培歴:10年)
  ◇ 福岡県福岡市の平川さん(不耕起栽培歴:2年)
  ◇ 熊本県阿蘇郡の入請舛(不耕起栽培歴:6年)

   注記:上記情報は2013年10月25日現在になります。

九州界隈で耕さない田んぼの稲つくり(不耕起栽培)の実践者が少ないのは何故ですか。

耕さない田んぼの稲つくりの実践者は全国的に見ても多いとは言えません。

理由としては、冬期湛水と呼ばれる稲つくりの農閑期に田んぼに水を湛水する環境に制限があることに加えて、 耕すことを前提に稲つくりをしてきた方々にとって「耕さない」という非常識の壁を乗り越えるには、 これまで自身が行ってきた稲つくりを否定するようなものであることは無視できないと思います。

また、手間暇を惜しまずに拘った稲つくりですので、付加価値の高いお米を収穫できることになりますが、 慣行栽培米と同じルートを利用すると、十把一絡げの買い取り価格になり付加価値をつけることができません。
拘った高付加価値のお米を消費者に届けるための仕組みを、自前で構築しなければならない点もこの稲つくりの 実践者が少ない理由になります。

九州界隈に限定すると、この耕さない田んぼの稲つくりは、初めは冷害に強くかつ収穫量の多い稲つくりが 目的であったため、冷害のリスクが小さい九州界隈での実践者が少ない理由と想像しています。

しかし、この冷害に強くかつ収穫量の多い稲つくりを重ねる過程で、発見される非常識を直視し、 再現性を確認することで、無肥料でも可能な稲つくりへ、無農薬でも可能な稲つくりへと脱皮し、 生きものがいっぱいになる耕さない田んぼの稲つくりへと変貌します。

別項でも紹介しているように、九州界隈で最初に取り組まれてから、平成24年で10作目 の状態です。
10年前の2003年は岩澤信夫先生の著書「不耕起でよみがえる」が出版され、この稲つくりが、生きものがいっぱいになる稲つくりや付加価値の高いお米を収穫できる稲つくりとしての魅力が紹介され、更に、 高温障害に強い稲つくり、干ばつに強い稲つくりなどの強みが紹介され、九州界隈でも徐々に注目を浴びるようになているのだと考えています。また、昨今の「食が壊れている」現実を知り、危機感を持たれた方が本物の稲つくりを求め、農家として自立できる稲つくりを求め、辿り着いたのがこの稲つくりであるのも広がりを加速しつつある理由になっていると考えています。

九州界隈に限定して、どのような方が実践していて、新たに挑戦しているかをまとめると、生粋の農家は熊本県の上野さんのみで、他の方や稲つくり塾に通う方々は前職は様々ですが 新たに稲つくりを実践している、もしくは、将来計画を具体化するステップとして稲つくりを学ばれる方々 になります。
耕さない田んぼの稲つくりを始める方々のほとんどが、新規就農やそれに近い形での新参者で、生粋の農家の方が塾で学ばれることは希です。生粋の農家にとって、「耕さない稲つくり」という非常識は大きな壁になるということなのかもしれません。(2012年12月24日記)

新たに田んぼを買って(or 借りて)、 耕さない田んぼの稲つくりを計画する前に。

 最近、耕さない田んぼの稲つくりをしたくて田んぼを買いましたとか、田んぼを買った後に、稲つくりを具体化する段階で、耕さない田んぼの稲つくりに辿り着きましたとの問合せが少なくありません。

 耕さない田んぼの稲つくり(冬期湛水・不耕起移植栽培)は、「貯める水が自由になる田んぼ」が絶対条件になるなど、田んぼの購入や借用にはその他にも検討していただきたいことがあります。
 また、田んぼを売る側の立場で売買物件を見る目を持つ必要があります。つまり、条件の悪い田んぼと条件の良い田んぼを持っている地主さんは、条件が悪い田んぼだからから手放すのであって、条件の良い田んぼは借り手がいくらでもいるので、敢えて売る必要がないので、よっぽどの事情がない限り売りに出すことはありません。
 仲介する方がそれなりの社会的肩書きを持っているからと、安易に信用するのではなく、良い田んぼの条件を把握し、何を確認すべきかを理解した上で、自分の目で確かめて納得した上で購入することを、強く、強く、お勧めします。

 そして、買った後ではなく買う前に、利害関係のない稲つくりの先輩に相談するなり、はらっぱ・ラボにアクセスして相談してください。
 但し、南阿蘇を起点に約200km圏内の方に限定(実際に現地で田んぼを見なければならなくなる場合を想定すると、行動範囲として約200km圏内が妥当だと考えるためと、気候風土をリアルに想像することができる範囲の限界のような気がするため)させていただきます。(2012年12月05日記)
 

「不耕起でよみがえる」や「究極の田んぼ」で紹介されている不耕起用田植機について。

岩澤信夫氏の著書「不耕起でよみがえる」や「究極の田んぼ」で紹介されている、イセキ農機社が開発した「不耕起用田植機 or 無代かき田植機」は、今日現在、同社から購入することはできません。
イセキ農機社の最新の多目的田植機(PZVシリーズ)の仕様を見ると理解していただけると思いますが、トラクターと同様に操作部が脱着できるように仕様変更されており、不耕起用田植機の操作部が新しい仕様に合わせられなかったことが理由で、製品化が断念されました。

そのため、2010年の暮れを最後に、イセキ農機社から不耕起用田植機を購入することができなくなりました。


現在、イセキ農機社の乗用の不耕起用田植機(6条 or 8条)を入手するには、中古市場に出回る中古機を待つしかなく、はらっぱ・ラボでも不耕起用田植機のWANTED広告を出したり、インターネットの中古農機市場で中古機を捜したりしています。

しかし、月刊誌「現代農業」の2012年5月号に紹介されているように、不耕起用の歩行式二条田植機が安井農場(日本不耕起栽培普及会の会員)から入手可能になっています。

但し、受注生産(納期約3ヶ月)であること、冬期湛水で田んぼの土壌が柔らかくなっていることなどの前提条件が設定されています(連絡先や詳細については、現代農業の記事を参照ください)。

また、まだ、具体的に案内できる段階ではありませんが、はらっぱ・ラボでは乗用の4条田植機をベースにした新たな不耕起用田植機を模索しています。(2012年12月24日記)