コシヒカリの刈り取りが終了すると、冬期湛水の準備が行われ、田んぼに水が張られる。
周辺の田んぼではヒノヒカリが栽培されているため、穂が出そろい登熟が進んでいる状態である。
そのような田んぼを尻目に、耕さない田んぼでは、イトミミズの餌としてのコメヌカとミネラル成分を補う山土を投入すし、来年の田植えまでの間、水を張り続ける冬期湛水が始まる
9月といえばまだ残暑が残っている時期で、紅葉にはまだまだのこの時期から始める湛水は、「冬期」と呼ぶには相応しくないが、それなりの理由がある。
標高約500mの南阿蘇は熊本市内よりも5℃前後気温が低くなる。この時期最低気温が一桁の日は珍しくなるが、日中に陽が照ると暖かくなる。
九州の大地に降り注ぐ陽の光(太陽エネルギー)は関東地方と比べて強いからだろうか、冬といえども、冬期湛水を始めた田んぼでは、浮草や藻が発生する。
耕さない田んぼは「耕さない」ので、稲刈りで使ったコンバインの機能で十数センチに切り刻まれた切りワラが絨毯のように敷き詰められたままである。
その状態で、冬期湛水が始められるが、来年の2月頃には土で覆われるために切りワラが観られなくなる。
微生物の活動によるが、冬期湛水が始まった頃は左の写真のように、切りワラが部分的に土で覆われているのを観察することができる。
ひこばえを伸ばした稲株も本格的な寒さが到来すると枯れてしまうが、この時期でも、田んぼ環境によっては藻(メラシロ)が発生する。
この時期の藻は発生して、光合成活動を行うと気泡を抱え、そして、水面に浮き上がり、寒さに耐えられずに枯れる
藻が発生している場所は、コンバインが方向転換した際にできたクローラの轍で凹んでいた場所である。
水を張り続けると、凹んでいた場所が平らになってくるのも冬期湛水の面白い現象である。
ちなみに、刈り取り時、ぬかるんだ場所では30センチ以上の凹みができるが、翌年の田植えまでには元通りになる。大きく盛り上がった部分は水没する程度に足等で少し均すが、平らにするためにトラクターにお出まし願うことにはならない(詳細はこちらを参照)。