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耕さない田んぼの稲つくり(冬期湛水・不耕起移植栽培)を南阿蘇で実践しています。

 

〒869-1411 熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陰4486-19

拘りの稲つくりSPECIAL RICE FARMING

生きものがいっぱいの田んぼで稲を栽培

ヘイケボタル、カエル、トンボ、イトミミズ等に代表される水田の生きものが、
  豊に生息する田んぼで稲を栽培しています

この稲の栽培法では、水田の生きものが生息しやすい環境づくりを、最初の目標にしています。
その一つとして、稲刈り直後から田んぼに水を張り、翌年の稲刈り日の約10日前までの間、その時々に応じた最適な水管理が行われます。田んぼの水管理は、稲の成長に合わせるのは勿論ですが、田んぼの生きものが生息しやすい環境も意識して行われます。 彼らが生息しやすい環境を意識するのは、彼らと稲の共生する環境づくりが目的になります。 その環境では、多種多様な田んぼの生きものが生息し、活動する中で、様々な贈り物が田んぼに返され、そして、それらは稲の成長に必要な養分として利用されることになります。 それらの贈り物が十分な量になると、田んぼに養分を補給しなくとも稲は元気に育つようになります。

循環する生態系を田んぼに実現するために、
  田んぼの生きものを皆殺しすることにつながる農薬は、種子消毒を含めて一切使っていません。

化学農薬が使われ始めたのは、戦後、経済が豊になった頃からのようです。
それ以前は、生態系が豊かな田んぼで稲は元気に生長し、実りの秋を迎えていたことを考えると、農薬を使わない稲の栽培は難しいことではなく、いかにして健康な成苗を育てるかが重要だと確信しています。

稲の生長に大きく影響を与える化学肥料は、育苗の段階から一切使っていません。

稲の栽培には、土壌のミネラルバランスを整える目的で、1500万年前の海底に堆積された土や貝が隆起した場所で採れる土(貝化石)を投入します。
また、イトミミズの餌として、稲刈り直後に米ヌカを1反(1,000u)当たり数十キロ投入します。 それらの貝化石や米ヌカも成長に欠かせない栄養源として使われていると思いますが、「耕さない田んぼ」で豊になった生きものからの贈り物が主な栄養源になっています。 この稲の栽培法では、米ヌカなどの肥料さえも使わずとも稲が成長する、田んぼの土壌環境づくりを二番目の目標にしています。


稲本来の自然な生長を引き出す栽培

晩稲から始める低温環境下での健康な成苗つくりで、
  稲が持つ本来の力を目覚めさせる準備をします。

阿蘇の草原の草花が農薬や化学肥料を施さなくとも生い茂る様に、稲も本来は同様に育ちます。
この稲の栽培法では、稲の遺伝子に組み込まれている本来の生長力を引き出す(野生化させる)、最初の準備として、健康な成苗(5.5葉の苗)づくりが行われます。
成苗づくりは、まだ寒い2月行われる浸種(種籾を水に浸し発芽の準備を行う作業)から始まり、田植え(5月上旬〜6月上旬頃)までの間、ほとんどの期間を苗にとっては厳しい低温環境下で時間をかけて育てる中で、少々の気候変動にも耐える力を持つ健康な成苗へと生長します。

稲が持つ本来の力を引き出すために、
  耕さない田んぼには低温環境で育てられた健康な成苗を移植(田植え)します。

硬い野道に生える野草が、硬い土をこじ開け、土中深く根をおろし、大きく生長し花を咲かせ、 やがて種を落とすように、「耕さない田んぼ」に移植された健康な成苗は、野草と同じように硬い土をこじ開け、たくさんの細かい根を土中深く張り巡らすようになります。 たくさんの細かい根を持つ稲は、散らばっている土壌中の様々な養分をかき集る能力が備わると同時に、外気温に影響されにくい土中環境に根を張ることも相まって、少々の気候変動に左右されることなく成長し、米を実らせることができるようになります。 また、「耕さない田んぼ」は、田んぼの生態環境を活性化することにも大きく寄与しています。 「耕さない」は「土壌圏の生きものの生息環境を壊さない」に直結します。言い換えると、生息環境が維持されることになります。そのため、彼らは次のステップへと生息活動を進められ、例えば、繁殖活動にエネルギーを集中したり、十分な越冬の準備によって来春を迎える生きものの個体数が増えたりするなど、「耕さない」こと自体が彼らの生息活動に大きく貢献することになります。


田んぼの生きものの成長に合わせた田んぼ管理

田んぼの畦管理は、ヘイケボタルなどの田んぼの生きもの達の成長に合わせて行われます。

[ヘイケボタルの生態]
南阿蘇の耕さない田んぼに舞うヘイケボタルの幼虫は5月上旬から6月上旬にかけて、畦に這い上がり草の根元などの地表面に巣を作り、そして蛹になり、羽化を待ちます。
5月下旬から6月下旬の梅雨の走りの頃に羽化して成虫となったヘイケボタルは、7〜10日間の生殖活動期中に畦の水際の草の根に産卵し、一生を終えます(その期間中に雌への求愛行動として光を放つのですが、その期間は水のみで生息するそうです)。
ヘイケボタルの卵は3〜4週間で孵化し田んぼへと生息環境を移し、モノアラガイやサカマキガイを餌に成長するそうです。

南阿蘇の耕さない田んぼの畦整備はヘイケボタルの生態に合わせて行うため、慣行栽培の田んぼの畦整備とは時期も畦草の処理も異なります。
畦整備はヘイケボタルが畦で活動している時期を避けるのはもちろんですが、刈り取った畦草を畦以外の場所に移動してから野焼きします。